宅録ナレーションの音質向上に高価なマイクは必要?audio technica / AT2020とAKG / C414 XLIIを比較!

宅録の実績も重ねてきたし、そろそろ機材のレベルもステップアップしたいけど、失敗したら怖いから、高価な機材は手が出しにくいなぁ・・・

というか、高価な機材にしたら必ず音質が向上するものなの?

基本的に機材は、スペックに応じて金額も変わってきます。
マイクも「audio technica / AT2020」のような1万円代の手頃なものもあれば、「AKG / C414 XLII」のような10万円を超えるスタジオ使用の高価なものもあります。
私も始めはAT2020を使用していたのですが、実績を積み重ねていく中で、もう一ランク上のマイクにしてみたい気持ちが湧いてきました。
しかし、奮発して購入しても「AT2020と変わらないじゃん!」となったら悲しいし、不要な出費は避けたいのが本音(笑)
そんな中、2024年のサウンドハウスさん主催のナレーションコンテスト『こえテク』で、ありがたいことに最優秀賞をいただき、副賞として「AKG / C414 XLII」(10万円超えの高価なマイク)をいただく機会に恵まれました!
ということで今回は、
- 宅録ナレーターに高価なマイクは必要なのか?
- マイクの金額差は音質に関係があるのか?
- 高価なマイク「AKG / C414 XLII」のスペックはいかほどか?
をレビューしていきます!
それぞれのマイクで録音したナレーションも用意したので、実際に聞き比べてみて、自分に合ったマイク選びのヒントにしてくださいね!

結論:宅録ナレーターに高価なマイクは必ずしも必要ではない!

私の経験上「安価なAT2020であっても、録音環境を整えて収録すれば十分に宅録案件はこなせる」と実感しています。
私はAT2020で1~2年間宅録の仕事をしていました。
WEBで使用されるナレーションのお仕事がメインでしたが、音質を指摘されたことはありません。
とはいえ、現在私がメインで使用しているのは「AKG / C414 XLII」です。
これにはいくつか理由があります。
- ナレーションコンテスト『こえテク』で最優秀賞を受賞し、その副賞でもらったから!
- 自腹じゃまだ買えない高価なマイクだから、せっかくなら使いたい!
- 聞き比べてみると、やっぱりC414 XLIIの方が良い音だから!
私の人生、なかなか一番になることがなく(笑)
その貴重な経験で得た大切なものですから、やっぱり使っていきたいという気持ちもありました。
それに聞き比べてみると、やっぱりC414 XLIIの方が音が良く録れるんですよ!
でもその差は「劇的に違う!」というより、「深み」が乗っかってくるような感じ。
とはいえ私の耳には「比較したうえで」「聞き比べてみないと」差を感じられませんでした。
もしかすると、オーディオインターフェースのランクも上げたらもっと差が感じられるのかもしれませんが、私は「FOCUSRITE / Scarlett Solo」「PRESONUS / Revelator io24」しか持っていないので検証できず・・・

宅録(自宅スタジオを構えている以外)は、どう頑張ってもスタジオクオリティには及ばないと思います。
- 録音環境を整えてもどうしてもノイズが入る
- ノイズ除去を強めにかけると、音質が劣化してしまう
- スタジオ収録では専属のプロが担当する収録・編集も、宅録ではナレーター自身が担当する
マイクだけ良いものを使っても、「劇的に音質が向上する」ということにはならないため、私がたどり着いた結論は「宅録ナレーターに高価なマイクは必ずしも必要ではない」です。
ただ「その繊細な変化を楽しみたい!」「今後録音環境や他の機材をレベルアップさせる予定だ」「ナレーション以外にもマイクを活用する予定だ」ということであれば、C414 XLIIを検討する余地は十分にあるかと思います。
それぞれのマイクの性能は?AT2020とC414 XLIIの紹介

次に、それぞれのマイクの性能について簡単にご紹介します。
Audio-Technica AT2020
AT2020のメリットと、どんな人にオススメなのかはこちら。
- 価格は1万円代と非常に安価。
- 素直でクセのない音質。宅録案件をこなす上で全く問題ない基本性能。
- 初心者でも手にしやすい価格帯だが、宅録案件にも十分対応できる。
- 単一指向性 (カーディオイド)のみ※
- これから宅録ナレーションを始めたい初心者。
- 予算を抑えつつ、クリアで汎用性の高い音質を求める方。
- まずはマイクの基本を学びたい方。
価格に対して申し分のない性能でコスパ良し!
「どんなマイクを買ったらいいのかわからない~!」という人はこちらを使ったらまず間違いない!

AKG / C414 XLII
C414 XLIIのメリットと、どんな人にオススメなのかはこちら。
- 価格は10万円代と高価なスタジオクオリティ。
- 輪郭のはっきりした抜けの良いサウンドは、抜群の存在感。
- 専用ケース、ショックマウント、ポップガード、ウインドスクリーンなど付属のアクセサリーも充実。
- 9種類の指向性パターン(単一指向性、双指向性、無指向性など多様)※
- パッド・ローカットフィルターの設定ができる※
- 「音質向上」や「表現力の追求」を目指したい方。
- 声のリアリティや奥行きを最大限に引き出し、プロレベルのクオリティを求める方。
- マイクにしっかり投資し、高品位な機材を求めている方。
キレイに録れるだけでなく、指向性やパッド・ローカットなどもマイク自体で設定可能なのがすごい!
指向性やパッドについては次の項目で紹介しますよ!

指向性・パッド・ローカットの設定ができる利点とは?
先ほど書いた、C414 XLIIに備わっている機能の「指向性」「パッド」「ローカット」について簡単に解説しますね。
パッド機能
パッドとは、マイクに入ってくる音量が大きすぎる場合に、その音量を小さくする機能のこと。
例えば、感情を込めて大声でナレーションしたり、叫ぶような表現をする際に、マイクの音が割れてしまうのを防げます。
C414 XLIIには「0dB(オフ) / -6dB / -12dB / -18dB」の4段階の切り替えスイッチがあります。
ローカットフィルター機能
ローカットフィルターとは、不要な低音ノイズだけをカットしてくれる機能のこと。
空調の低いうなり音やPCのファン音などの部屋の環境音として存在する低い周波数帯のノイズ、マイクスタンドを通じて伝わる振動による低周波ノイズなどを軽減できます。
録音段階で不要な低音をカットできるため、後から編集する手間が省け、作業効率も上がります。
C414 XLIIには「Flat(オフ) / 40Hz / 80Hz / 160Hz」という4段階の切り替えスイッチがあり、それぞれの周波数以下を特定の傾き(dB/oct)でカットします。
9種類の指向性パターン
指向性とは、マイクがどの方向の音を、どのくらい拾うかを示す特性のこと。
C414 XLIIは、マイクが音を拾う範囲を9段階で細かく調整できるため、宅録環境や録りたい声の状況に合わせた音質を選ぶことができます。
指向性パターン | 解説 |
---|---|
無指向性 | マイクの周囲360度からの音を均一に拾う。 部屋の自然な響きを活かしたい時や複数人でマイクを囲んで収録する際などに便利。 |
ワイドカーディオイド | カーディオイドよりも広範囲の音を拾いつつ、マイクの背後の音は抑えられる。 一人でナレーションするけれど、少しだけ部屋の響きを取り入れたい場合に◎。 |
カーディオイド(単一指向性) | マイクの真正面からの音をよく拾い、側面や背面からの音をカットする。 宅録で自分の声だけをクリアに録音したい時や、部屋の反響音やノイズを最大限に抑えたい場合に◎。 |
ハイパーカーディオイド | カーディオイドよりもさらに正面の音に集中し、横からの音をより強く抑える。 極力サイドのノイズを排除し、ピンポイントで声を狙いたい場合に有効。 |
双指向性 | マイクの正面と背面からの音を同程度に拾い、左右からの音はほぼ拾わない。 マイクを挟んで向かい合って話す対談などに便利。 |
その他中間パターン | 上記5つの主要パターンの「中間」も選べ、さらに繊細な音の拾い方を調整できる。 宅録環境や声の表現に合わせて変えられる。 |
C414 XLIIは「ただ録るだけ」のマイクではなく、こういった性能も持ち合わせている上にそれぞれ細かく設定が変更できます。
指向性の切り替えができるので「ナレーション以外にもマイクを使いたい!」と思っているなら用途によってマイクを用意しなくてもこれ1本で済みますよ。

実際に聞き比べてみよう!AT2020とC414 XLIIの宅録音質比較

実際にAT2020とC414 XLIIの音声を聞き比べてみましょう!
同じナレーション原稿をAT2020とC414 XLIIでそれぞれ読んでみました。
果たしてマイクの金額差は音質の向上に繋がるのか?
ぜひともご自身の耳で確認してみてください。
- マイクと口の距離は一緒
- 表現も極力一緒(人間なので多少のブレはご勘弁!)
- リップノイズ、ホワイトノイズのみをRX10でやんわり除去
- オーディオインターフェースは「PRESONUS / Revelator io24」を使用
- 宅録は、左右上に吸音材、机にはブランケットを設置した中で収録
- C414 XLIIは「ローカットフィルターを80Hz」で設定
極力録音した状態の音声にしてますので、ノイズが残ってますがご了承くださいませ!

音質比較①:企業VPナレーション風
音質比較②:ドキュメンタリーナレーション風
音質比較③:イベント告知ナレーション風
音質比較してみた感想

個人的な感想はこちら。
- クセのない素直な音で、十分キレイに録音できている
- C414 XLIIと比べるとやや平面な印象
- C414 XLIIよりもノイズが入っている
- 全体的にAT2020よりキレイに録音できている
- AT2020より「深み」を感じる
- AT2020よりノイズも少なめ
聞き比べてみると、C414 XLIIの方が深みというか、厚みというか、奥深さみたいなものを感じませんか?
繊細な表現はC414 XLIIの方がしっかり拾ってくれますよね。
C414 XLIIはローカットフィルターを「80Hz」にして録音したおかげで、AT2020よりノイズも少なめになっています。
(録音した音声の音量が同じになるようにしたため、AT2020の方がC414 XLIIより入力レベルを5㏈ほど上げたのでノイズも大きく入ったんだろうと思います。)
音がより繊細に録れるのにノイズは最小限に収録できるのは、自分で編集もする宅録ナレーターにとって大変便利!

とはいえ、これは聞き比べてみた結果です。
AT2020の音声だけ聞いたら、キレイな音声でまったく問題ないと思います。
高スペックマイクを使ったことがある人が聞くと、やや平面的な音に聞こえますが、宅録案件には十分対応できるレベルです。
1万円代でこのクオリティはコスパ抜群!
良い音で録りたいけど、資金面も気になるという人にはうってつけのマイクです!

まとめ:AT2020でも宅録案件は十分OK!ステップアップしたい人にはC414 XLIIもあり!
「宅録でナレーションを納品するのに必ずしも高価なマイクが必要なわけではない」というのが、私の見解です。
もちろんAT2020とC414 XLIIでは、やっぱりC414 XLIIの方がより良い音が録れていると感じます。
C414 XLIIは、声の繊細なニュアンスや空間の深みといった「情報量」をより豊かに拾ってくれる、プロ仕様の魅力があると思います。
しかし、それはあくまで比較してこそ分かる「繊細な差」。
マイク単体を変えただけで、その価格差(約9万円)をあからさまに感じるほど劇的に音質が向上するかと言えば、個人的には「うーん、どうだろう?」という感じ。
AT2020も宅録案件には十分通用する、非常にクオリティの高いマイクです。
実際に私自身、AT2020で多くの宅録案件をこなし、音質についてクライアントから指摘されたことは一度もありません。
私がC414 XLIIをメインで使うのは、ナレーションコンテスト『こえテク』で最優秀賞をいただき、副賞としていただいたから。
人生でなかなか一番になる経験がなかった私にとって、このC414 XLIIは宝物です。
せっかくの機会なので、この高価なマイクを使い倒し、そのポテンシャルを最大限に引き出していきたいと思っています!(笑)
だからこそ、もし
- この繊細な音質の変化を追求したい!
- 今後、録音環境や他の機材も段階的にレベルアップさせる予定だ
- ラジオ収録や楽器収録など、ナレーション以外にもマイクを幅広く活用したい
といった思いを持っているなら、C414 XLIIは間違いなく検討する価値のあるマイクですよ!
今回の比較動画作成で「C414 XLIIの方が深みがあっていいな~」と改めて気づきました!

今回の記事が宅録をする上で悩んでいる人のお役に立てれば嬉しいです。
今回も最後までご覧くださり、ありがとうございました!
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